エピローグ
大学の校門で待ち合わせをしようと思ったのが間違いだった。
彼女が目立たないわけがなかった。初等部の頃よりもさらに大きくなった身長と、ハリウッドセレブみたいに派手な顔立ちでは、周囲の注目を集めないわけがなかったのだ。
彼女の周りにはちょっとした人だかりができていた。
何も知らない男連中が彼女のまわりを取り囲んでいる。そして、彼女にむかってサークルの勧誘をしていた。テニスっていいよね、だの、素人でも大歓迎だよなどといった甘言が離れたところから聞こえてくる。
しかし、話しかけられている当の本人は男たちのほうを見ることもせず、手元のスマフォ画面を見下ろしていた。隠そうともしない不機嫌な仏頂面でスマフォを操作している。僕のスマフォがさきほどからブルブルと鳴っていた。
「く、玖留美ちゃん、ごめんね、遅れちゃって」
「遅い」
不機嫌そうな顔で玖留美ちゃんは言った。
周囲の男たちが「なんだこいつは」という表情で僕のことを見つめる。そんな男たちを無視して、玖留美ちゃんは僕の手を掴んで、恋人つなぎをしてきた。
「はやく行くわよ。待ちきれないから」
「ちょ、ちょっと玖留美ちゃん、痛い」
「遅れてきたあんたが悪い。ほら早く」
僕のことを引きずっていこうとする玖留美ちゃん。そんな彼女にむかって、周囲の男連中のリーダー格みたいな男が言った。
「その男、君のなんなわけ? ずいぶんちっこいヤツだよね」
ヘラヘラ笑っている。
僕は身長も体重もほとんど成長しなかった。とうぜん、その場にいる男の中で一番体格的に劣った人間は僕だった。男たちは優越感をもって僕のことを笑っているのだ。
「彼氏だけど、それがなに?」
玖留美ちゃんが言った。
「これからこいつとSEXするのよ。邪魔しないでくれない?」
そんな言葉に男たちが唖然とした表情になる。
圧倒されてそれ以上喋ることもできなくなった男たちを見て、玖留美ちゃんは「ふんッ」と笑って歩き出した。
「ったく、あんたが遅いせいでゴミみたいなヤツらに絡まれたじゃないの」
「ご、ごめんって。でも、よく我慢できたね」
「あたりまえでしょ。ゴミの相手してたら、ますます時間なくなっちゃうじゃない」
そこで玖留美ちゃんはニンマリと笑った。
さきほどまでの仏頂面が嘘のような嗜虐的な笑顔で僕のことを見下ろす。
「今日は朝まで付き合ってもらうからね」
「あ、朝まで?」
「あんたの精液ぜんぶ食べた後も永遠に犯すから。覚悟しなさいよね」
耳元でささやかれた言葉に僕は早くも勃起してしまう。
「ふふっ、変態」
「ち、違うよ。あんなこと言われたら誰だって」
「ほら、早く帰るわよ」
玖留美ちゃんがさらに速く歩き出す。
僕は小走りで彼女の歩みについて行くしかなかった。
*
僕は両親に強制されて私立の中学校受験をすることになっていた。
そのことを知った玖留美ちゃんは「ふーん」とか「で?」とか妙に冷たく僕にあたった後で、めちゃくちゃ勉強をし始めた。
というか、たぶん人生の中で初めて勉強というものに真剣に取り組んだのだと思う。それまでは、授業だって塾だってまじめに通っていないことは明らかだった。それが周囲の人が目をみはるほどに勉強を始めて、あっという間に僕は抜かれた。
いっそ清々しいほどだった。
僕があれだけ毎日毎日勉強ばかりしていた成果を、彼女はわずか1ヶ月ほどで抜き去った。
2学期の中間テストで彼女はクラス1位になった。唖然呆然とする教師を前に勝ち誇った表情を浮かべる彼女のことを今でも鮮明に覚えている。
玖留美ちゃんはそれを僕にも自慢してきた。
たぶん、彼女はそれで僕に屈辱を与えて楽しもうと思っていたのだと思う。
けれど僕の中にあるのは玖留美ちゃんに対する尊敬だけだったので、「すごい」「やっぱり玖留美ちゃんは頭よかったんだね」「すごいよ玖留美ちゃん」と賛辞をおくりまくった。そうすると黙ってしまった彼女は照れ隠しなのか僕の頭をべしべしと叩いてわしゃわしゃと撫でた。
そして、こう言ったのだ。
「わたしも中学受験する。だから勉強教えて」
こうして初等部最後の時間は玖留美ちゃんと一緒に勉強することに費やされた。
僕の自室や玖留美ちゃんの部屋で、僕らは毎日夜遅くまで勉強した。そんなことをあの厳しい両親がよく許したものだと思う。最初は例のごとく「そんなバカなこと許されるわけないでしょ」「おまえは大人しく勉強していろ」と言われていたのが、1週間もすると「玖留美さんはいい娘だから一緒に勉強しなさい」「おまえも玖留美さんを見習ってがんばるんだぞ」なんて態度がいっぺんしていた。
なにがおこったのか分からなかったが、僕はとても嬉しかった。
僕と玖留美ちゃんはそれから学校でも放課後でもいつも一緒だった。塾をやめた玖留美ちゃんと一緒に二人きりで勉強する毎日。とうぜん、勉強の休憩中には玖留美ちゃんに食べられた。
「く、玖留美ちゃん、ここじゃマズいって」
「なんで?」
「だ、だって僕の両親家にいるんだから、気づかれちゃうよ」
「大丈夫よ。あの二人なら大丈夫だから。あんたは心配しなくていいの。ふふっ、いただきま~す」
「むぐっ」
付き合うことになってから玖留美ちゃんはいつも僕にキスをしてきた。
唇が触れるだけのものではなくて、その舌をねっとりと絡ませる大人のキスだ。彼女の肉厚な舌が僕の口内を縦横無尽に暴れまわり、その間僕は目をくらくらさせながら悶えるだけ。
声を我慢なんてできるはずもなくて、僕は「ア・・・・んんッ!」と喘ぎ声をもらす。唾液音が部屋中に響きわたっていて、壁の薄い我が家ではその行為が両親に伝わってしまうことは明らかだった。
それなのに両親は注意にくることもなかった。だから僕らは毎日キスをして、興奮した玖留美ちゃんに首を締められて食べられたり、その太ももの中に閉じこめられて食べられたりしながら、勉強をしていった。
「合格おめでとう、玖留美ちゃん」
玖留美ちゃんはあっさり合格した。
しかも首席での合格だった。
県内では有数の進学校で優秀な生徒たちがたくさん入学してくる中で、彼女は一番で合格したのだ。もうその頃には僕と玖留美ちゃんの差は歴然で、逆立ちしたって彼女に勝てないことが分かっていた。根本的に頭のつくりが違うとしか思えなかった。玖留美ちゃんは1聞けば1000を理解した。理解したことはぜったいに忘れなかった。そんな怪物みたいな彼女は青天井に知識をたくわえ、テストで点数を稼ぐテクニックをあっという間に修得してしまったのだ。
それはぜんぶ玖留美ちゃんの功績だった。それなのに、僕はなぜか、玖留美ちゃんの両親から感謝された。
彼女の父親なんかは泣いて喜んでくれるほどだった。「きみのおかげで玖留美が道をはずさなくてすんだ」だの「ありがとうありがとう」なんて言いながら僕に感謝をしてくれた。それからというもの、玖留美ちゃんの両親からも気に入られて、僕と玖留美ちゃんは両家族公認のカップルになった。
中学時代も高校時代も。
そして大学に入学して同棲を開始してからも。
僕と玖留美ちゃんはいつも一緒だった。僕は彼女が好きだった。彼女も僕のことを気に入ってくれているのが分かった。
そして僕は、毎日毎日、玖留美ちゃんに食べられていた。それは大学入学後も変わらなかった。
*
大学の校門で待ち合わせをして待たせてしまったことに怒っているのか、家に帰ってきた後の玖留美ちゃんはいつもより乱暴だった。
僕の服を強引に脱がせて全裸にする。
少しでも抵抗したらびんたが飛んできて、バチンというすごい音がして僕の体は吹っ飛んでしまった。
「く、玖留美ちゃん、痛い」
「うるさい。ほら、とっとと脱げ」
「ま、まってよ。あああ」
すぐに全裸にさせられる。
玖留美ちゃんも全裸になった。
いつ見ても彼女の体には驚嘆させられてしまう。
引き締まった体に女性の柔らかさが共存している。大きなおっぱいは重力を無視して鎮座していて、ピンク色の乳首が芸術品みたいに飾られていた。
「早く」
「う、うん」
促されて僕は玖留美ちゃんの足下で膝まづく。
手を腰にやって仁王立ちした彼女の密壷に口づけをする。そのまま、舐めていった。
「ん」
満足そうな声が聞こえてきた。
彼女は僕の舌使いを堪能しながら、優しげな手つきで僕の頭を撫でてきた。僕は彼女に頭を撫でられてトロンとしてしまいながら、必死にご奉仕を続ける。
「だいぶうまくなってきたよね、小太郎」
「そ、そうかな」
「うんうん。まあ、大谷とかと比べたらぜんぜんだけどさ。初等部時代の大谷くらいにはなったんじゃない」
「は、ははは」
乾いた笑顔しか浮かばない。
大谷くんとは中等部も高等部も一緒だった。もちろん彼の隣にはいつも委員長がいた。大学入学後はほとんど交流はなかったが、たまに「死ぬかもしれない」「委員長に搾り殺される」とかラインが入っているので生きていることは確かだった。
「うん、OK。準備できたよ」
許しが出た。
彼女がニンマリと笑った。その視線だけで十分なのに、玖留美ちゃんは徹底的にやる性格なので、いつものように僕の体の準備をすることにしたようだ。
「小太郎、どうされたい?」
「う、あ」
「わたしの体のどこで食べられちゃいたい?」
玖留美ちゃんは上機嫌の時には僕の希望を聞いてくれる。僕は小さな声で「太もも」と答えた。
「OK」
ニンマリ笑って彼女が僕の体を跨いだ。
ちょうど僕の胴体部分を太ももの間に挟んで、そのまま食べてしまった。
「ひ、、っひいいいいッ!」
「あはっ、声まだ出せるんだ。じゃあ、もっと強くしていいね」
玖留美ちゃんの太ももにさらに力がこもる。
彼女のますます成長した極太の太ももが、僕の胴体を完全に包み込んで潰した。太ももに食べられている。僕の体が玖留美ちゃんの太ももに捕食され、そのまま吸収されていく。ぼくはたまらず、限界まで勃起してしまった。
「は~い、小太郎の準備も完了っと」
「あ、アアアアッ」
「楽でいいわよね。こうやって食べちゃうとすぐに興奮してすっごく固くするんだもの。準備の手間がはぶけていいわ」
さっそくするわよ。
そう言うと彼女はそのまま僕に襲いかかった。
いつものように彼女が馬乗りになる。
僕は床に仰向けに転がされてあとは食べられるのを待つだけになってしまった。
「あはっ、かた~い」
そのまま余韻も何もなく玖留美ちゃんは僕の一物を挿入した。
ぐっしょりと濡れた密壷の感触が伝わってくる。鍛えている玖留美ちゃんの中は締め付けが激しくて、ぐねぐねとうごめくヒダが僕の一物を情け容赦なく愛撫し始めていた。そのあまりの快感に、僕は「ひい」と悲鳴をもらし、こみあげてくる射精の予感を無理矢理我慢した。
「ちょっと、まだ入れただけじゃない。なんでイきそうになってるのよ」
「だ、だって、玖留美ちゃんの中、すごすぎ」
「まだ動いてないのにそれじゃあ、先が思いやられるわね」
そのとおりだった。
彼女はまだ腰を動かしていないのだ。僕の一物を根本までくわえこんで、彼女は僕の下半身にどっかりと座りこんでいるだけ。彼女の大きなお尻が矮小な僕の体を全体重をかけて押し潰している。その重量感で僕の小さな体はミシミシと軋むほどに潰れてしまっている。それが征服されている被虐感と、「ああ、今から僕はこの女の子に食べられてしまうんだ」という興奮をもたらし、ますます勃起を固くさせてしまった。
「ふふっ、変態」
玖留美ちゃんがニンマリ笑って言う。
僕の体に馬乗りになって、じっくりと僕のことを見下ろしている彼女はとても美しかった。
「じゃあ、動くわよ」
「う、うん」
「あんたはすぐに射精しちゃうだろうけど、わたしが満足するまでがんばってもらうからね」
「わ、わかってるよ」
「それじゃあ、開始♪」
そこからは乱暴な食事が繰り広げられるだけだった。
肉食獣になった玖留美ちゃんが荒々しく腰を振り始める。パンッパンッパンッという肉がはじける音が部屋中に響き、僕の悲鳴が反響するほど鳴り響いた。
そんな悲鳴をあげればあげるほどに玖留美ちゃんはさらに燃えたぎり、ますます腰使いがえげつないことになっていく。
僕はあっという間に射精した。
射精しても腰使いはやまない。
パンパンパンパンッと連続で腰が振るわれ、僕の男性の象徴から精液を奪い取っていく。連続射精。射精が終わってもまだそのままだ。
玖留美ちゃんの下半身は本当に名器で、射精をしても萎えさせるということを知らなかった。射精直後の敏感な亀頭を重点的に責めてきて僕は白目をむく。
ガクガクと体を暴れさせても玖留美ちゃんの両腕が僕の両肩を押さえ込んで、地面に縫いつけにされてしまった。
体を暴れさせて快感を逃がすことも許されず、僕は玖留美ちゃんに与えられる快感によってますます狂っていった。
何度も何度も射精をして精液を奪われる。
何時間も何時間も。
玖留美ちゃんは飽きることもなく、体力の限界なんてないみたいに腰を振り続けていく。
萎えそうになるとすぐに彼女の手が僕の首に伸びてきて首を締める。それだけですぐに僕の勃起は回復して「ふふっ、やっぱり楽でいいわ」と玖留美ちゃんに笑われる。
数時間が経過する中で玖留美ちゃんも何度かイく。
体をのけぞらせて快感に震えながら、ますます加虐趣味全開の瞳がキラキラ光っていく。
途中で休憩もあるのだが、その間も僕と玖留美ちゃんはつながったままだった。
添い寝をしてくれて、その間、ゆっくりと何度も頭を撫でられる。その手が動くたびに僕はバカになっていくのが分かった。食虫植物の甘い蜜に頭を溶かされてしまったみたいに、僕は玖留美ちゃんの大きな体にすがりついて甘えてしまう。
「ほら、続きするよ」
そしてまた食事が始まる。
圧倒的な体格差の前に僕は自分の体が食べられていくのを呆然と眺めるしかない。すでに自分の体力はなくなっていて、されるがままになる。玖留美ちゃんの体力は無尽蔵なので、ひたすらにひたすらに腰を振り続けて獲物である僕を食べてしまうのだ。
「ん」
快感に甘い声が漏れた。
玖留美ちゃんが感じている。
僕はもう喋ることもできず、ビクンビクンと体を痙攣させることしかできない。ラストスパートとばかりに玖留美ちゃんが僕にのしかかってきた。大きなおっぱいの中に僕の顔が埋もれる。ずっしりと体重をかけられてのしかかられているので、彼女の汗とか体温を全身に感じることができた。
玖留美ちゃんの肉に吸収されている。
僕の小さな体は玖留美ちゃんの大きな体によって完全に覆い隠されてしまっていた。彼女の屈強な腕が僕の体をぎゅううっと抱きしめる。全裸の男女が抱き合って地面に寝転がっている光景。そんな熱烈な恋人同士の格好で、玖留美ちゃんは僕のことを食べていった。
腰だけが振るわれる。
僕の体をぎゅううっと押し潰しながら、玖留美ちゃんは腰だけを浮かし、パンッパンッパンッと軽快に腰を振り続けた。
僕は彼女の体に潰され、その圧倒的な性能差をもった体に吸収されながら、捕食される。最後の射精がほとばしって、それと同時に玖留美ちゃんもイった。
ぎゅううっと、僕の体にまわされた腕に力がこもって、僕の体が噛み砕かれる。彼女の甘い声と、震える体。玖留美ちゃんもかなり深くイっていることが分かる。僕はプルプル震える手を彼女の背中に伸ばして、ゆっくりと撫でた。とたんに玖留美ちゃんの痙攣が増すのだが、安心させるように撫でていくとそれもおさまっていく。
僕と玖留美ちゃんは全裸で、これ以上くっつけないほどにくっついて、全身を絡ませながら余韻にひたっていた。
*
「ふうー、気持ちよかった」
そんなことを言って玖留美ちゃんが起きあがった。
僕の体に馬乗りになり、まだ僕の一物を挿入したままで、起きあがる。あれだけ盛大にイったのに、もう体力を回復している。僕とは体力が違うのだ。それはもう圧倒的なまでに。
「小太郎、あんたすごい顔になってるわよ」
ニンマリ笑って玖留美ちゃんが言う。
「ほとんど白目むいて、涙と涎でぐしょぐしょになってる。目もトロンとして、もうぐっちゃぐちゃに溶けちゃってるみたい」
「あ、あああ、あああ」
「ふふっ、じゃあ試してみようか」
彼女の腕が伸びてきた。
僕の首を掴んで、ぎゅううっと締め上げる。ビクンと飛び跳ねた僕の体を力づくで押さえ込み、至近距離からまじまじと僕の顔を見下ろしてくる玖留美ちゃん。その笑顔は本当に美しかった。
「あ~あ、もう勃起しなくなったね」
玖留美ちゃんが言った。
「締めればすぐに勃起して何度もヤってきたけど、もう効力ないみたい。さすがにぜんぶ出し切ったみたいね」
玖留美ちゃんが挿入したままの僕の一物をぐりぐりと刺激した。それでも僕のものは反応せず、快感で体を痙攣させるだけだ。
「うん。じゃあ、SEXはこれで終わりね」
玖留美ちゃんがようやく僕を解放した。
何時間ぶりに僕の一物が彼女の肉の監獄の中から解放されて、自由になる。僕はようやく訪れた完全な休息を甘受して、ふうーと息を吐いた。
今日も玖留美ちゃんは激しかった。すごいの一言だ。自分がますます彼女に心を食べられてしまったのが分かる。
満ち足りた気持ち。
そんな終わった気でいたのがいけなかったのだろう。肉食獣を前にしているのだから、はやくその場から逃げ出さないといけなかったのだ。
気づいた時には遅かった。
玖留美ちゃんがゴム手袋をつけ始めた。
手術用に使う薄いゴム手袋だ。
無色透明のそれが事務的で無機的でなんだか倒錯した興奮を僕にもたらしてくれるゴム手袋。それが玖留美ちゃんの両手にはめられていた。
「く、玖留美ちゃん?」
「ん? なあに」
「なんでゴム手袋なんてはめてるの?」
「なんでだと思う?」
「いや、だってさ、もうじゅうぶんやったじゃない。もう無理だよ。無理。く、玖留美ちゃんだって、さすがに疲れてるでしょ?」
ふふっと玖留美ちゃんが笑った。
ゴム手袋を完全に装着した彼女がゆっくりと僕のほうに近づき、見下ろしてきた。
「それはそれ、これはこれ」
「く、玖留美ちゃん」
「デザートは別腹なのよね。ほら、四つん這いになりなさい」
僕がいやいやをするように体をよじらせると、玖留美ちゃんは強引に僕の体を仰向けにしてしまった。
背後で玖留美ちゃんが女の子座りになったのが分かる。その屈強な二本の腕が僕の下半身を抱きしめ、ぐいっと僕の尻を持ち上げた。それで準備は完了してしまった。
「ふふっ、いい声で鳴いてね」
「玖留美ちゃん、や、やめオッッホオオオンッ」
制止の声も奪われた。
僕のアナルに玖留美ちゃんの長い指が挿入される。
ゴム手袋を装着した彼女の指が、僕のアナルをめちゃくちゃに犯していく。その卓越した技。僕の気持ちがいいところを完全攻略している指の動き。ねっとりとからみつくような繊細な指の技の前に、はやくも僕は人間をやめて泣き叫ぶしかなかった。
「オッホオオンンンッ! ひいいいいッ!」
「いい悲鳴~。ほら、もっと」
「ッヒャアアアンッ! アヒイインンンンッ!」
「前立腺虐めてあげる」
彼女の指が僕の前立腺をノックしていく。
まるでそれはあいさつだった。
今から犯すよという合図。
条件反射的にそれだけで僕はおかしくなってしまう。ますます大きくなった僕の痴態に満足したのか、玖留美ちゃんが笑って、前立腺を犯し始めた。
「ほら、もっと鳴け」
「あっっひいいいんんッ!」
「ん~、いい悲鳴。子宮に響くわ。ビンビンする」
「オッホオンンンンッ!」
「やっぱ、アナル責めで小太郎虐めるのは別腹ね。SEXとは違うよさがあるわ」
僕に語りかけながら玖留美ちゃんの指は止まらない。男を廃人にする手つきでもって、玖留美ちゃんは僕のアナルを犯し続ける。
「これだと、小太郎が勃起できなくなっても楽しめるからいいわよね」
僕の下半身を片手でがっちりと拘束して、もう片方の手で致死性の快楽を与え続けていく。
「今日は人間辞めさせて、マゾ豚にするまでやるからね。一時的に人格ぶッ壊して、わたしのペットにするから。ふふっ、そのまま公園に散歩にいこうか。首輪と紐つけて四つん這いで歩かせてやろうか」
玖留美ちゃんがニンマリ笑っていることが分かる。
彼女の指がひたすら動き、僕の尻の中をめちゃくちゃにする。乱暴に動いたり、ねっとりと優しく蹂躙されたりで、僕ははやくも頭がおかしくなっていった。
「徹底的にやるからね。覚悟しろよ、小太郎」
「オッホオオオオオンッ!」
悲鳴をもって答える。
ビクンビクンッと痙攣してメスイキしてしまい、その最中も玖留美ちゃんの指使いはやまない。僕は悲鳴とメスイキをするだけの物体となって、玖留美ちゃんにめちゃくちゃにされていった。
*
時間の経過は分からなかった。
終わったときには指先一つ動かせなくなっていた。
下半身の感覚がない。動けと命じているのに体が動かない。当然、歩くことだってできなくなっていた。
「しかたないわね」
そんな全身を弛緩させてベットの上でピクピクと痙攣するだけになった僕をお姫様抱っこして、玖留美ちゃんが風呂場に移動したことをおぼろげながら覚えている。
シャワーで体を洗われて、あらかじめ湯をためていた浴槽に二人で入る。
風呂場での記憶はほとんど残っておらず、気づいたときにはリビングのソファーで座っていた。
窓からは太陽の光が差し込んでいた。
もう朝なのだ。
けっきょく、夜通し食べられてしまった。
僕は全身を包み込む倦怠感でぼおっとしながら、玖留美ちゃんと一緒に映画を見ていた。
僕の体はソファーに座っている玖留美ちゃんに後ろから抱きしめられている。
二人とも全裸だ。
彼女の大きな胸が僕の背中でぐんにゃりと潰れている。彼女の片方の腕が僕の小さな体をぎゅううっと抱きしめているのだ。僕の体は玖留美ちゃんの大きな体に吸収されるみたいに密着していて、一つの生命体みたいになってソファーに座っていた。
そんな格好で、玖留美ちゃんのもう片方の手が僕の頭を永遠と撫で続けていた。
彼女も撫でる行為に集中しているわけではなくて、視線はテレビ画面に向けられていた。僕も頭を撫でられる多幸感と、全身を支配する倦怠感の中で、ぼおっとテレビ画面に映る映画を見ていた。
映画の内容は強い女性たちが活躍する映画だ。
内容はよく頭に入ってこないのだけど、派手な顔つき体格の優れた女性が国際社会で活躍して、企業スパイをしたり、潜入調査をしたり、ハニートラップで男を手玉にとったりしながら何か悪の陰謀を食い止めようとしている話しだった。
僕と玖留美ちゃんはその映画を黙って見ていた。
もう100年分の会話をしたくらいの濃密なコミュニケーションをした後だったので、話すことなんて何もなかった。
それに、映画の感想を話すとやっかいなことになる。活躍している女性のことを僕が「すごいね」とほめると、玖留美ちゃんが「わたしのほうがすごい」と張り合ってくる。「主演の人おっぱい大きいね」と言うと「わたしのほうが大きい」と不機嫌そうに言う。「身長も高いな~」と言うと最後には首を絞められる。
SEXの後に見る映画はいつも大抵、強い女の人が活躍する映画だった。それを選ぶのは玖留美ちゃんだ。主導権は玖留美ちゃんにあるので、映画を選ぶのもいつも玖留美ちゃんだった。
僕は楽しんで見ているのだが、なぜか自分が選んだはずの映画を見て玖留美ちゃんは大抵不機嫌になる。
今も玖留美ちゃんは僕の頭を撫でながらテレビ画面をしらけた瞳で見つめていることだろう。
だんだんと不機嫌になっていくのが、僕の頭を撫でる力と、僕の体を抱きしめる力が強くなっていくことによって感じられた。
「く、玖留美ちゃん、痛いよ」
「ああ、ごめんごめん」
力が緩められる。
それでようやく生きた心地がしてくる。
僕はまだ自分では指先一つ動かせないほど消耗しているので、玖留美ちゃんに背後から抱きしめられてなすがままになっているのだった。
「なんか、こういう強い女が活躍する映画見てると気分悪くなってくるのよね」
玖留美ちゃんがイライラしながら言った。
彼女がイライラしていると矛先がこっちにくるのでとても怖い。
「む、無理することないんじゃない? それなら、こういう映画見なければいいんだよ」
「でも、それだと小太郎が困るでしょ」
「どういうこと?」
僕の頭を撫でながら玖留美ちゃんが言う。
「だって、あんたこういう強い女の子が好きでしょ」
「まあ、そうだね」
「だからわたし、強い女が出てくる映画選んでるのよ。別にわたしはこんなの見たくないけど」
なんだかよく分からない。
どういうことなんだろう。
「あのさ、玖留美ちゃん」
「なによ」
「僕は、強い女性じゃなくて、玖留美ちゃんが好きなんだよ」
「は?」
「だからさ、君が強い女性だから、僕は強い女性が好きなんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・」
黙ってしまう玖留美ちゃんだった。
ぎゅううっと抱きしめてくる腕の力が増していている。めちゃくちゃ痛くて苦しい。
「ふーん」
感情なく玖留美ちゃんがつぶやいた。
「で?」
「いや、でって言われても」
「ふーん。で?」
「いや、だからさ」
「小太郎のくせにナマイキ」
わしゃわしゃと頭を撫でられる。ぐらんぐらんと脳味噌が揺れてしまって命の危険を感じた。
ひとしきり撫でるのが終わると、彼女が両腕で僕の体を抱きしめてきた。
ますます僕の体は玖留美ちゃんの大きな体に吸収されて一つになる。彼女の高い体温の熱さが全身を包み込んだ。
「ねえ、今日はどうしようか」
「と、とりあえず寝ようよ」
「まあ、午前中はさすがにね。でも、午後はジム行きたいんだけど。あんたもくるわよね」
「う、うん」
「ふふっ、わたしが鍛えてるところ見るの、あんたは好きだもんね」
そのとおりなので否定できない。
無尽蔵の体力を有する玖留美ちゃんが自分の限界まで追い込むトレーニングは見ているだけで興奮する。彼女の皮下脂肪の下に眠っていた筋肉が躍動するほどに、僕は前かがみになって勃起を隠すことしかできなくなる。
「でも、気をつけなさいよ。ジムではわたしのそばから離れないでね」
「う、うん」
「特に格闘技ブースなんて行ったらダメだからね。いい?」
玖留美ちゃんの通っているジムは特殊で、女性会員限定のジムだった。
実家の近くにもあって、玖留美ちゃんは初等部の頃から通っていた。
都内の大学に進学した後は第1号店でトレーニングをしているのだが、そこには格闘技ブースがあって、いつも女性が男性をボコボコにしている。
そのブースがあるのは4階なのだが、その階にひとたび入ると男たちの悲鳴で鼓膜が痺れるほどだ。エレベーターで何度がボコボコにした女性とボコボコにされた男性が一緒になって帰宅している様子を見たことがあるが、男性の顔面は原型を留めていなかった。
玖留美ちゃんは全国全体でも数人しかいないゴールド資格者なので一目置かれている。
だから彼女の連れであれば下手に手出しはされないとは思うけれども、あのジムでは常識は通用しないので万が一もあり得る。だから玖留美ちゃんも神経質になっているのだろう。やっぱり、玖留美ちゃんは優しい女の子だった。
「あんたは変態だから、きれいな女の子が男ボコボコにしてたらホイホイついて行きそうなのよね」
ん?
「女の子に食べられたいんだったら、わたしが食べてあげるから、我慢しなさい。いいわね?」
なんだか玖留美ちゃんは盛大な勘違いをしているようだった。
僕が玖留美ちゃん以外の女性に虐められて悦ぶと本当に思っているようだ。信頼というものがない。いったい、僕をなんだと思っているのだろうか。
「玖留美ちゃん」
それでも食べてくれるというのなら仕方ない。
というか僕の体はさきほどからウズウズしていたのだ。さきほどまでのSEXで、玖留美ちゃんがどうしてもしてくれないことがあった。それが少しだけ自分の欲求不満としてたまっている。僕はモジモジしながら言った。
「あのさ」
「なによ」
「首のさ」
「首?」
「そう、首のアザがね薄くなってきてると思うんだよ」
僕は下を向く。
玖留美ちゃんがニンマリ笑うのが背後でも分かった。
「え~、そうかな~」
玖留美ちゃんの手が僕の首まわりを撫で始める。
イタズラ娘みたいなからかう声で彼女が続けた。
「わたしにはそうは見えないんだけどな~」
「いや、薄れてると思うよ。うん。これだとさ、ジムいったときにも、ほかの女子に見えないと思うんだよね。だからさ」
僕は、かあああっと顔を赤くしながら、
「僕の首、食べてください」
何も反応がない数秒が流れる。
玖留美ちゃんが「ふふっ」と笑った。
その腕が僕の首に巻き付いてきた。
「ほんっと、あんたは変態ね」
「く、玖留美ひゃん」
「あ、まだ喋れるんだ。もうちょっと力こめよう」
ぎゅうううッ!
「カッヒュウウウウッ!」
「あははっ、すごい悲鳴」
立ち上がっちゃおう。
そう言って彼女が立ち上がった。
背後からのチョークスリーパー。彼女のたくましい二本の腕が僕の首を完全に抱きしめて締め付けてくる。そのまま仁王立ちになると、身長差から僕の足は地面につかなくなる。苦しさと喉につたわる異物感で僕はジタバタと暴れるしかできない。
「ほ~ら、太郎にも見てもらいましょうよ」
玖留美ちゃんがリビングに備え付けてある浴槽に近づいた。
そこには、わざわざ専用の業者をつかって実家から運んできた太郎が泳いでいた。エサをもらえると思って喜んでいるようだ。その鯉の前で、僕は玖留美ちゃんに食べられようとしている。
「じいっくり食べてあげる」
玖留美ちゃんが僕の耳元で囁く。
そのウィスパー声のねっとりとした声色だけで僕は達してしまいそうになる。
「誰が見ても分かるようなアザにする。それを見た人がマーキングだってすぐに分かるようにひどいヤツをつける。うれしいでしょ」
囁き声が熱をもっていく。
「時間をかけて食べるからね。蛇が獲物を丸飲みして何日もかけて消化するみたいにじっくりやる。午前中寝るとかいってたけど無理だから。もうわたしも我慢できないからね」
ふふっと、捕食者が笑った。
「気絶させないで徹底的に食べてやるよ」
腕に力がこもる。
ギチギチと首の肉が押し潰されていくのが分かった。彼女の腕の筋肉と僕の首の筋肉とでは質も量も段違いなのだ。僕は食べられるしかない。背後からチョークスリーパーをかけられ、宙づりにされて、足をばたつかせてお魚さんにされながら、永遠と食べられ続けていく。
幸せだった。
とても満ち足りた気持ちになっていった。
目の前で太郎が泳いでいる。
ぽちゃんと跳ねてエサを催促していた。
水槽のガラスにうつった玖留美ちゃんと目があう。
ニンマリと笑っている。
これ以上ないほど僕らは一つだった。
首を捕食している腕を優しく撫でて、笑った。
おしまい