「あ~、キモチよかった~」


 夜の帳もおりたころ。

 俺と朝倉は玲奈にむかって深く頭を下げ、額を床にこすりつけて土下座をしていた。

 ようやく命乞いと足舐めの命令がやんで、俺たちが選んだのは玲奈に土下座をするということだった。床に熱烈なキスをして、これ以上ないほど頭を下げる。俺たちは全裸のままで、ぷるぷる震えながら、目の前の少女にむかって土下座をしていた。


「さてと、どっちにしようかな」


 玲奈の足裏が俺の後頭部を踏んだ。

 椅子に座ったままの彼女がその長い足を伸ばして、俺の後頭部に軽く押し当てているのだ。その大きな足裏の感触を後頭部に感じるだけで俺の体の震えはますます大きくなった。


「こっちにしようかな~」

「ひ、ひいいッ!」


 足の感触がなくなったと思うと、隣の朝倉が悲鳴をあげた。

 おそらく朝倉の後頭部にはさきほどの俺と同じように玲奈の足裏が押し当てられているのだろう。彼女は俺たちの恐怖を煽るように、片足で交互に俺と朝倉の後頭部を踏んで遊び始めた。


「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な」


 一文字づつ足を動かして交互に頭を踏みつける。

 自分の頭に玲奈の足裏が押し当てられるたびに、俺の体は滑稽にもビクンと震えて恐怖に体が飛び跳ねていた。その様子が面白いらしく、玲奈は俺たちの後頭部を踏み、生殺与奪の権利者として、支配物である俺たちの反応を見て楽しんでいた。


「ねえ、どっちを殺したほうがいいかな? おまえらはどう思う?」


 ニヤニヤした言葉。

 滑稽にも仲間を売り渡すことを期待したその質問。

 俺はもう耐えられなかった。

 恨みっこはなしなのだ。

 だったら、この選択だって朝倉は許してくれるだろう。


「俺を殺してください」

「え?」

「俺を殺してください。朝倉は勘弁してやってください」


 俺は土下座をしたまま言った。

 自分のことを殺してくれと。

 朝倉を生かしてくれと。

 俺はそんなことを口にしたままガクガクと震えていた。


「ふ~ん」


 玲奈の声。

 静寂。

 ガクガクと震える音と、朝倉の「お、おい春信」というためらいの声。つうっと俺の後頭部に玲奈の足裏が乗せられる。それがぐりぐりと動き、俺の頭を蹂躙した。顔面が床に押しつぶされる。その間、俺はただひたすらに土下座をするしかなかった。


「決めた」


 確信のこもった玲奈の声。

 ニンマリとした笑顔が見えるようだった。


「朝倉を殺す」

「ひいいいいいいッ!」


 朝倉の悲鳴が遠くに飛ばされていく。

 俺がバっと顔をあげると、頭上には玲奈のアナコンダのような太ももの間に胴体を挟み込まれた朝倉の姿があった。


「ほら、ぎゅううううううッ!」


 べぎばぎべぎいいいいッ!


「ひっぎいいいいいいッ!」


 スカートから伸びたムチムチの太ももに筋肉の束が浮かび上がり、みっしりと朝倉の胴体を潰した。

 べこんと凹んだ朝倉の胴体は、そこに入っていた内蔵が潰されて物理的にへこみができていた。そこにあてがわれたムチムチの小麦色太ももによって、朝倉の胴体は太ももの中に埋もれてしまっていた。


「あ、朝倉!」


 太ももの中で悶えている親友の姿。

 背後から太ももで締め付けられているので、朝倉の顔は俺からよく見えた。

 すでに顔を真っ赤にして苦しんでいる。胴体にくわえられる締め付けがあまりにも強烈すぎるのか、無駄とわかっていてもジタバタと暴れるしかない様子だった。自由な両手両足を暴れさせて、その屈強な太ももの間から1ミリだって脱出することができない。


「あはっ、暴れてる暴れてる」


 太ももだけ。

 玲奈は両手を後頭部にまわして部屋でくつろいだ格好で、太ももだけで朝倉を挟み込み、潰していた。

 そんな余裕たっぷりの表情なのに、太ももによる締め付けは強烈で、朝倉は顔を左右にふって苦しみからなんとか逃れようと必死の努力をしている。


「必死だね~。ほら、がんばれ、がんばれ」


 ぎゅうううううッ!


「かひゅうううううッ!」


 白目をむいた。

 ビクンと痙攣してそのまま顔をぐじゃぐじゃに醜く変貌させて止まってしまう。


「死んだ? ねえ、死んだ?」


 ニンマリとした笑顔。

 彼女はそのまま朝倉の髪の毛をつかむと、180度回転させて観賞を始めた。その勝ち誇ったような笑顔。自分のやったことで男が気絶してしまった光景を見て、とても妖艶に笑っている。


「あ、まだ息はあるね」


 観察をしている玲奈が言う。


「でも胴体がベコンとへこんでてイヤラシいな~。これ内蔵どうなってんの? ぷぷっ、あ~、うけるわ~」


 玲奈の笑顔。

 そのサディストの権化のような視線でもって、白目をむいて気絶している朝倉を観賞していた。


「な、なんで」


 俺はつぶやいていた。

 正座をしながら、椅子に座った玲奈を見上げて、絶望の声をあげる。


「ど、どうして。なんで、朝倉を」

「ん~?」


 ニンマリと笑って俺のことを見下ろしてくる。

 その視線の迫力に、俺は思わず「ひい」と悲鳴を漏らしてしまった。


「だってさ~、こっち殺すほうが楽しいじゃん」


 笑顔。

 そんな心底楽しそうな顔、見たくない。

 こいつは俺の親友を殺そうとして、楽しそうにしているのだ。


「よ~し、トドメさすか」


 立ち上がった。

 その体格差がさらに高まる。

 正座をしている俺からみると、玲奈の顔がはるか上に感じられた。そんな高見から、俺は見下ろされているのだった。


「ほ~ら、お顔挟んじゃうね~」


 おどけたように言って、玲奈が朝倉の頭を跨ぐようにして立って、その頭部をすっぽりと太ももの間に挟み込んでしまった。


「起きろ」


 ぎゅううううッ!

 さらには致命的な締め付け。

 頭蓋骨だけをねらった一撃で、朝倉の頭はミッシイイっと音をたて、それだけで朝倉は覚醒した。


「ひいいいいいいッ!」

「起きた。じゃ、殺すね」


 ぎゅうううううッ!


 太もも。

 小麦色に焼かれたアマゾネスのような太もも。

 これまで俺たちの同級生を殺してきた女性の脚だ。それが俺の親友を殺そうとしている。すっぽりと筋肉質な太ももに埋もれて、そこからブロッコリーみたいに生えた男の顔。それは紫色に変色し、とても苦しそうだった。

 このままだと死ぬ。

 朝倉がこのままだと死んでしまう。


「や、やめてええええ」


 俺は裏かえった声で言って、玲奈の太ももに飛びついていた。

 その閉ざされた太ももをつかんで、一生懸命に開こうとする。その間に閉じこめられた朝倉を助けるために、俺は全身全霊をかけて玲奈の太ももに反抗した。


「ぷぷっ、なにそれ」


 バカにした声。

 それがはるか高見から降ってくる。

 ビクともしなかった。

 俺の手は彼女の屈強な太ももをつかみ、力づくで抵抗しようとするのだが、どうにもならなかった。1ミリだって動かせない。俺は全身をつかって一生懸命に力をこめているのに、玲奈は太ももの締め付ける力だけをもって俺のことを圧倒しているのだった。


「ねえねえ、このままだとアサクラ死んじゃうよ?」

「く、くうううううッ!」

「ほら、一生懸命がんばらないとすぐ死ぬ。わたし、まだまだ本気で潰してないんだからね、はやくしないと・・・・・・」


 ぎゅううううううッ!


 ベギバギッギイイイイイッ!


「ぎゃあああああああッ!」


 さらなる力がこめられる。

 ボコンっと膨張した玲奈の太もも。もはや俺たちの胴体以上の太さをもった太ももによって、俺の体ははじかれてしまった。ぶざまに地面に転がり、悶える。それよりも大絶叫の悲鳴が、教室中にとどろいた。


「や、やめて」


 無様に。

 すべてにおいて劣った男が玲奈様に懇願する。


「やめてください。殺さないで。なんでもします。俺も朝倉もがんばって、一生懸命に玲奈様に尽くしますから、だから、だから朝倉を殺さないでください」


 土下座。

 もうこれしかなかった。

 俺には玲奈様の慈悲にすがるしかないのだ。

 その間もぎゅううううっという音と、ミシミシバギバギという音、そして朝倉の悲鳴が轟きわたっていた。


「ん~、別にいいよ。おまえらはもうがんばらなくて」


 淡々と。

 玲奈は淡々と言った。


「もう次の玩具も補充できたからさ。もう用済みなんだよね、おまえら」

「な、なにを・・・・・・」


 用済み。

 次の玩具?

 玲奈は何を言っているのだろう。

 もうこの島には俺と朝倉しかいないのだ。

 ほかの男子は玲奈が殺してしまった。

 それなのに、玲奈は何を言っているのだろうか。


「みんな、入ってきて」


 玲奈のいたずら娘のような笑顔。

 その声に呼応するように教室のドアが開いた。

 そして、ぞろぞろと見知らぬ男子たちが教室に入ってくる。


「な、なんだ?」


 俺たちと同年代の男子たち。

 しかし、その顔に一人も見覚えがなかった。

 よく見れば、着ている制服もまちまちだった。これまで見たこともない制服を着用した男たちが何十人も入ってくる。


「・・・・・・・」


 教室に入ってきた男子たちは無言だ。

 ぼおっとした視線で俺たちのことを見つめている。そこには一切の感情はないように思えた。まるで操り人形。そこで俺はまさかの可能性を思いついてしまった。


「そう。こいつらは、本島から拉致してきた奴らなの」


 とびっきりの笑顔。

 玲奈が種明かしをするかのように言った。


「本島のほうにもちょくちょく私みたいなのが生まれてきてるみたいだけど、まだまだ表だってはないからね。誘拐し放題だよ。手当たり次第に暗示にかけて、島に連れてきちゃった。第二陣、第三陣も、ぞくぞく送られてくるんだよ」


 ニンマリとした笑顔。

 玲奈は言った。


「次はこいつらを殺すの」


 嗜虐的な。

 どこまでもサディズムに彩られた表情を浮かべて、玲奈が続ける。


「3ヶ月間、クラスメイトとして生活して、それで殺す。こいつらが全滅したらまた次の誘拐してきた奴らで同じことをする。ずっとずっと。永遠に。ここを閉ざされた楽園にして、殺して殺して殺し続ける」

「あ、ああああああッ!」

「だからさ、アサクラもおまえも、もう用済みなんだよね」


 どうしようもなかった。

 俺たちは代替可能な玩具でしかなかったのだ。

 代わりなんていくらでもいるのだ。

 俺たちは彼女のサディズムを満足させるための道具でしかなかった。俺たちの決意や奉仕なんてものは、彼女にとって快感を高めるためのスパイスでしかないのだ。


「ふふっ、新しいクラスメイトたちにも見てもらおうね。潜在意識に、これから自分たちがどうされちゃうのかすりこめば、暗示もききやすくなるだろうし」


 ぎゅううううううッ!

 潰し始める。

 ゆっくりと。

 確実に。

 玲奈が朝倉の頭部を潰していく。

 むっちりとした太もも。

 その間に挟み込まれた鬱血した頭部。

 白目をむき、断末魔の絶望した表情を浮かべながらなすすべもなく潰されている親友の姿。

 俺は無駄と分かっていながら玲奈の太ももにすがりつくしかなかった。殺されていく親友をなんとか助けたい一心で、その強靱な太ももと相対する。

 全身全霊をかけて閉ざされた太ももを開こうとする。

 くすりと、頭上で笑い声がした。


「潰れろ♪」


 ベギベギベッギイイイイイッ!

 俺の間近で親友だった男の頭が潰された。

 鮮血が舞って、玲奈の下半身だけではなく、俺の全身が血だらけになる。

 鉄の匂いがする。

 頬にかかった豆腐みたいな感触はなんだろう。

 玲奈の太ももの間には首から上がなくなってしまった死体が今もなお挟み込まれていた。


「ん、死んだ」


 ニンマリとした笑顔。

 俺は呆然とその顔を見上げるしかなかった。

 人を一人殺したのに、なんの罪悪感も覚えていない表情。それどころか、まるで勝ち誇るようにして、加虐の快感に浸っている少女がそこにはいた。


「ふふっ、なんかいつもより興奮したかも」


 玲奈が言う。

 彼女の手が伸びてきて、俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「春信に見られていたからかな? 男子を殺すところを間近で見られていると思うと、なんだかとっても興奮したよ。洞窟の時もそうだったけど、間近でクラスメイトが殺されていく様子を見せると、そいつの絶望も堪能できていいかもね」


 ふふっと笑う。

 わしゃわしゃという手つきがさらに強くなった。


「そうだ。今後は春信に見せていこうかな」


 計画を。

 嬉しそうに語る少女。


「おまえにも誘拐してきた奴らのクラスメイトになってもらう。何十年も一緒にあいつらと暮らしてきたっていう暗示もかけてあげるね。それで、あいつらに情がうつったところで、おまえの目の前であいつらを殺す。こんなふうに間近で、見せつけるようにして殺す。うんうん、それってなんだか素敵かも」


 頭を撫でてくる手が乱暴に動かされる。

 俺は頭をぐらんぐらんさせながら正座をしたまま玲奈のことを見上げるしかなかった。


「それじゃあ、手始めに舐めてもらおうかな」


 玲奈が言った。


「親友だった物の血と肉片、舐めて綺麗にしてよ、春信お兄ちゃん」


 おどけたような笑顔。

 是非もなかった。

 俺は涙をぽろぽろこぼしながら、朝倉の血と肉片を舐め、喰わされていった。

 玲奈の足下に膝まづき、その大きな体にすがりながら、必死のご奉仕を続ける。

 そんな俺のことを玲奈はニンマリした笑顔で見下ろし、いつまでも俺の頭を撫で続けた。

 これが永遠に続くのだ。

 これから俺は暗示をかけられ、クラスメイトたちが殺されていく様子を間近で見せつけられていく。

 それはずっと、ずっと続くのだろう。

 この閉ざされた楽園の中で、俺はいつまでも玲奈の玩具として生きていく運命だった。

 これが地獄でなくてなんであろう。

 けれどもどうにもならない。

 俺たちのような弱い男は、強い女の子様を楽しませるための代替可能な玩具でしかないのだ。


(俺は……一生……このまま……)


 涙がとめどなくあふれてくる。

 親友だった肉の感触で吐きそうになりながらも必死に耐える。

 頭上にはニヤニヤと俺のことを見下ろす玲奈の笑顔。

 俺は自分の運命を嘆きながらも、玲奈の太ももを舐め、惨めな男としての奉仕を続けていった。


 完